-防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)-


防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)の効能

防風通聖散は漢方では代表的な肥満解消薬です。体力充実して太鼓腹型の脂肪太りで、便秘、赤ら顔、尿量少なく、頭痛、肩こり、高血圧気味の人に用います。肥満、むくみ、高血圧、動脈硬化、腎臓病、便秘などに応用します。便秘がちで肥満があり、俗に太鼓腹といわれる人に用います。食毒、水毒などを発汗、利尿、便通などによって排出して病変を改善させると考えられています。生薬のなかの「大黄(だいおう)」には緩下作用があり、「桔梗(ききょう)」「山梔子(さんしし)」には解毒消炎作用があると言われています。


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防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)の解説

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)の痛風やアトピー皮膚炎への効果

防風通聖散は、痛風やアトピー皮膚炎に対して優れた効果を発揮します。痛風は代謝障害の病気ですし、アトピーなどのアレルギー疾患も根本の原因は体の中にたまった毒素ですから、代謝を活発にして毒素を体外に排出させれば治ります。

防風通聖散は18種の生薬からなる処方で、大変生薬が多いといえます。このように生薬の多い処方を「後世方」(ごせいほう)といいます。漢方は証(体質)と処方が合わないと効果がありませんが、後世方のいいところはどんな証の人にも対応する適応範囲の広い薬ということです。これに対して、生薬の種類の少ない処方を古方(こほう)といい、これは証がピタリと合うと鋭い効果を発揮します。

麻黄(まおう)荊芥(けいがい)防風(ぼうふう)生姜(しょうきょう)薄荷(はっか)連翹(れんぎょう)川きゅう(せんきゅう))が発汗と熱の放散を促進する生薬です。

連翹、山梔子(さんしし)黄ごん(おうごん)石膏(せっこう)甘草(かんぞう)桔梗(ききょう)が、消炎、解熱・鎮静の生薬です。

大黄(だいおう)芒硝(ぼうしょう)が体内の余分なエネルギーや毒素を外に出す瀉下(しゃげ)つまり下剤の生薬です。滑石(かっせき)白朮(びゃくじゅつ)が利尿の生薬です。

このほか、発汗、利尿、瀉下(しゃげ)によって体液が過度に失われないよう当帰(とうき)芍薬(しゃくやく)によって滋養強壮を図ります。そして白朮によって消化と吸収を促進するというになっている漢方薬です。

配合率は滑石が3g、石膏、黄ごん、桔梗、甘草、白朮が各2g、大黄が1.5g、芒硝が1.5g、生姜が1.2g、その他は1.2gとなっています。

このように防風通聖散は、体の中に過剰に入った栄養が毒素となり、たくさんの毒がたまって起こる病気の治療を目的とした処方です。

防風通聖散の大黄(だいおう)と生姜(しょうきょう)

防風通聖散の品質ですが、効くものもあれば効かないものも有ります。漢方処方を構成するのは生薬ですから、個々の生薬の品質がよくなければ、良い治療効果が得られません。

特に18種もの生薬で構成される防風通聖散は、個々の生薬の量が少ないだけに、生薬の品質が重要な意味を持ってきます。そのなかでも、大黄(だいおう)生姜(しょうきょう)の2つの生薬が重要になります。

まず大黄(だいおう)ですが、漢方医が選ぶ場合は表面が黄褐色、身が重くて材質が堅く、油性があって味は苦いが渋みはなく、噛むと粘り気の出てくるものを良品とします。主に四川省で産するものですが、瀉下(しゃげ)で用いる場合は生のものを、それ以外の目的のものは修治、すなわち熱を加えて調理したものを使わなくてはなりません。防風通聖散は瀉下(しゃげ)で用いますから、生のものでないと効果が正しく現れません。

次に生姜(しょうきょう)ですが、生姜はショウガのことですが、漢方生薬でショウガは生姜、乾生姜、乾姜の3種類があり、それぞれ効能も用途もまったく異なります。

本来漢方処方で生姜を使うという場合は、いわゆる生のヒネショウガでなくてはなりませんが、これは法律上使えないので、日本薬局方でいう生姜、つまり乾生姜を代用します。防風通聖散の場合も同様です。これが、防風通聖散の効き目を損ねる原因になっています。本当の生姜、つまりヒネショウガには発汗作用がありますが、乾生姜は内臓を温める作用のほうが強いからです。

このため、もし防風通聖散を飲む場合は、別にヒネショウガを3~5gくらいすりおろして、一緒に服用すると本来の効果が生まれると思います。

漢方薬の味

西洋医薬の場合「良薬は口に苦し」といいますが、漢方薬の場合はこの逆で、品質のいい薬ほどおいしいと感じられるものなのです。

消化器系の不調に使う薬は苦いものが多いので苦味健胃薬(くみけんいやく)といいますが、実際胃が悪いときには苦く感じないといいます。苦いと感じたときはもう治った証拠です。つまり、体がその薬を求めているときには、薬の味は心地よいものなのです。これが西洋医薬の薬にはない、天然の生薬から作られた漢方薬の特徴です。

防風通聖散も同様で、この処方を求める証、つまり栄養過多で排出すべき毒素が体内にたまっているような人は、おいしく感じられるものです。品質のいい防風通聖散ほど味が優れているのは、一つ一つの生薬の品質が良いからです。

防風通聖散は肥満にも効果

また、この防風通聖散を飲むと解毒作用の一つとして、下痢をすることがあります。しかし、それも長くは続きません。下痢のあとは便秘も解消し、適切に便通が起こって、体が整えられていきます。腹部の毒だけでなく、血管の中や皮膚の毒なども排出されていくので、だんだんと肥満も解消されていきます。

適応される主な症状

配合生薬

配合生薬の効能

当帰(とうき)

婦人病の妙薬として、漢方でひんぱんに処方される重要生薬の一つです。漢方では古来、駆お血(血流停滞の改善)、強壮、鎮痛、鎮静薬として、貧血、腰痛、身体疼痛、生理痛生理不順、その他更年期障害に適用されています。

茎葉の乾燥品は、ひびやしもやけ、肌荒れなどに薬湯料として利用されています。鎮静作用はリグスチライド、ブチリデンフタライド、セダン酸ラクトン、サフロールなどの精油成分によります。また有効成分アセチレン系のファルカリンジオールに鎮痛作用があります。

駆お血効果を裏付ける成分として、血液凝固阻害作用を示すアデノシンが豊富に含まれています。また、アラビノガラクタンなどの多糖体に免疫活性作用や抗腫瘍作用が認められ、抗ガン剤としての期待も、もたれています。

芍薬(しゃくやく)

芍薬は漢方処方で最もよく配合される生薬の一つで、主として筋肉の硬直、腹痛、腹部膨満感、頭痛、血滞などに広く処方されています。

主成分のモノテルペン配糖体ペオニフロリンには鎮痛、鎮静作用の他、末梢血管拡張、血流増加促進作用、抗アレルギー、ストレス性潰瘍の抑制、記憶学習障害改善、血小板凝集抑制などの作用が有ります。その他、非糖体ペオニフロリゲノンには筋弛緩作用が認められています。

川きゅう(せんきゅう)

川きゅうには補血、強壮、鎮痛、鎮静があります。漢方では貧血、冷え性、生理痛生理不順など婦人科の各種疾患に利用されています。

有効成分のリグスチライドなどのフタライド類に筋弛緩作用や血小板凝集阻害作用が有ります。またクニジリットには、免疫活性作用が認められています。

古い医学書には性病による各種皮膚疾患、化膿性のできもの、疥癬(かいせん)などを治すと記載されています。

山梔子(さんしし)

山梔子は消炎、利胆、止血作用があります。漢方では黄疸、肝炎、血便、血尿、吐血、不眠の治療に用いられます。有効成分はゲニポシド、ゲニピン、クロシン、クロセチンなどです。

クロシンやクロセチンには、胆汁分泌促進作用があります。また、この生薬に脂質代謝改善効果がみられるのは、ゲニピンのLDLコレステロール低下作用と、クロセチンの血中コレステロール低下作用によるものです。

胃腸薬に適用されるのはゲニピンの胃酸分泌抑制作用、鎮痛作用および瀉下作用(便通を良くし便秘を解消する作用)によります。ゲニポサイドおよびゲニピンには、記憶障害の予防効果が期待されています。

連翹(れんぎょう)

連翹には、解毒、排膿、利尿、消炎、鎮痛作用があります。漢方では化膿性疾患で熱症状があるとき、解熱、消炎、排膿、利尿を目標に処方されます。

有効成分はオレアノール酸、サポニン、フラボノイド配糖体などを含んでおり、果実の水製エキスは黄色ブドウ球菌にも抗菌作用を示します。

とくに腫物の良薬として用いられ、瘰癧(頸部リンパ節の結核)やニキビの治療には定評があります。抗生物質がなかったころは、その煎剤を淋病にも使いました。

民間療法では連翹の果実を煎じ、腫物に服する方法が伝わっています。

薄荷(はっか)

薄荷には、芳香性健胃、解熱、発汗作用があります。漢方として芳香性の矯味矯臭、駆風、整腸薬とするほか、メントールの鎮痛鎮痒作用を利用してハツプ剤などの外用薬に使います。

薄荷には精油が1.5~4%含まれています。主成分のメントールは70~90%と多く、辛味も強いです。

民間療法としては頭痛のとき薄荷を噛んだり、漆にかぶれたとき薄荷を煎じて患部を洗ったりしました。このほか歯痛や筋肉痛に外用したり、茎と葉を布に詰めこんで風呂に入れると補温性の浴剤となって冷え症に効きます。

荊芥(けいがい)

荊芥には、発汗・解熱作用、消炎作用、止血作があります。単独で使うことは稀で、いろんな漢方製剤に配合されます。適応症状は、感冒や頭痛、鼻炎、扁桃炎、中耳炎、湿疹、慢性皮膚炎、アトピー性皮膚炎などで広く用いられています。

荊芥の場合は他の生薬との配合によって、全体としての薬効を高める生薬といえます。有効成分は精油のメントン、リモネン、プレゴンなどやフラボノイド類も検出されています。

中国では、カゼで熱があり喉が痛いとき、剤芥を煎じて飲む民間療法が普及しています。

防風(ぼうふう)

防風には、発汗、解熱、鎮痛、鎮痙作用があります。 漢方薬で、皮膚疾患薬、消炎俳膿薬、鎮痛薬とみなされる処方に配合され、発汗、解熱、鎮痙などを目標に、感冒による関節痛や頭痛などに使用します。

有効成分は、クマリンやクロモン誘導体、サポシニコバンA~Cなどです。

クマリンには抗ヒスタミン作用やカルシウム拮抗作用、血液凝集抑制作用、発がん抑制作用があり、防風エキスでは、ラットの実験で関節炎を抑制する作用が確認されています。

麻黄(まおう)

麻黄は発汗、解熱、鎮咳、鎮痛作用があり、喘息や呼吸困難、悪寒、関節痛に有効で、漢方では、風邪の初期に頻用される葛根湯(かっこんとう)などに配合されます。

主成分のエフェドリンは気管支筋弛緩作用を有する他、アドレナリンに似た交感神経興奮作用を示し、散瞳、発汗、血圧上昇効果などをあらわします。

また、麻黄エキスおよびエフェドリンは体温を上昇させ、発汗を促して熱を放出させることにより解熱効果をあらわす他、抗炎症作用も認められています。

また、多糖体であるエフェドランA-Eを含有し、血糖降下作用を示します。また麻黄の根には、地上部と逆に血圧降下作用を示す他、止汗作用があります。

大黄(だいおう)

大黄は瀉下(下剤)、消炎性健胃薬として、常習性便秘症に使用されます。

ジアンスロン成分であるセンノサイドA-Fに瀉下作用が認められます。センノサイドA-Fは腸内細菌によって強い瀉下活性を示すレインアンスロンに変換されるからです。

フェノール配糖体の一種リンドレインには消炎、鎮痛作用が認められています。またタンニン成分に、血中尿素窒素(BUN)低下作用が報告されていることから、腎不全改善効果も期待されます。

漢方では、特に実証の人(体力がある人)の便秘薬として他の生薬と配合して高い効果をあげていますが、大黄には子宮収縮促進作用や骨盤の充血増長作用があるため、産前、産後や月経期間中は使用しない方がいいです。

芒硝(ぼうしょう)

芒硝には緩下作用、血液凝固抑制作用などがあります。漢方では緩下、消化、利尿薬として便秘、腹満、心腹部に抵抗のあるものに処方されています。

成分は硫酸ナトリウムです。

白朮(びゃくじゅつ)

朮は体内の水分代謝を正常に保つ作用があり、健胃利尿剤として利用されています。特に胃弱体質の人の下痢によく効き、胃アトニーや慢性胃腸病で、腹が張るとか、冷えによる腹痛を起こした場合などにもいいです。

日本では調製法の違いによって白朮(びやくじゅつ)と蒼朮(そうじゅつ)に分けられます。いずれも同じような効能を示しますが、蒼朮は胃に力のある人の胃腸薬として使い分けられています。

両者の主成分は、精油成分のアトラクチロンと、アトラクチロジンです。ちなみに、白朮には止汗作用があるのに対して、蒼朮は発汗作用を示します。朮は漢方治療では、多くの処方に広く利用される生薬の一つです。

桔梗(ききょう)

桔梗には、去痰、鎮痛、鎮静、解熱、抗炎症、抗腫瘍、抗潰瘍作用など多くの効果があります。これらの効果は有効成分サポニンのプラチコジンによるもので、動物実験で証明されています。

その他、有効成分のイヌリンはマクロファージ(免疫細胞)を活性化し、動物実験で抗がん作用が認められています。

漢方では、去痰や消炎、俳膿、鎮咳などに処方されています。民間療法として、葉の生汁を漆かぶれに塗るとよいといわれています。

黄ごん(おうごん)

漢方の中でも最もよく利用されるものの一つで、主に炎症や胃部のつかえ、下痢、嘔吐などを目的に使用されています。

黄ごんエキスは、炎症に関与する諸酵素に対して阻害作用を示しています。これらの作用は、この生薬中に豊富に含まれるフボノイドによるもので、特に有効成分バイカリンやバイカレイン、およびその配糖体はプロスタグランジンらの生合成やロイコトリエン類などの炎症物質の産生を阻害します。

その他、抗アレルギー(ケミカルメジエーターの遊離抑制)、活性酸素除去、過酸化脂質形成抑制、トランスアミナーゼの上昇抑制による肝障害予防、および胆汁排泄促進による利胆作用などが確認されています。

また、ヒト肝ガン由来培養肝がん細胞の増殖を抑制する他、メラノーマの培養細胞の増殖を抑制することより抗腫瘍効果が期待されています。漢方で多くの処方に配合されていますが、単独で用いられることはありません。

石膏(せっこう)

石膏には、解熱作用 消炎作用 止渇作用 鎮静、鎮痙作用、抗アレルギー作用、収斂作用(組織を引き締め作用)があります。漢方では、利尿、激しい喉の渇き、体全体の熱さましを目標に処方されます。

成分は、主に含水硫酸カルシウム、微量に二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄があります。

甘草(かんぞう)

甘草は漢方治療で緩和、解毒を目的として、いろいろな症状に応用されますが、主として去痰、鎮咳、鎮痛、鎮痙、消炎などです。

有効成分のグリチルリチンには、痰を薄めて排除する作用があり、体内で分解するとグリチルレチン酸となって咳を止めます。

その他、グリチルリチンには多種多様の薬理効果が有り、消炎、抗潰瘍、抗アレルギー作用の他、免疫活性や、肝細胞膜の安定化、肝保護作用、肝障害抑制作用などが明らかにされています。

有効成分イソリクイリチンおよびイソリクイリチゲニンは糖尿病合併症の眼病治療薬として、また胃酸分泌抑制作用もあり胃潰瘍の治療薬として期待されています。

甘草はあまり長期服用しますと、低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加などの副作用が現れることがあるので、注意を要します。

滑石(かっせき)

滑石は胃腸で有害物質や水分粘液などを吸着しますので、胃腸炎に有効です。また腎臓の炎症をとりますので頻尿、排尿障害に有効です。

漢方では利尿(膀胱炎や尿道炎)消炎、止渇などを目標に処方されます。

成分は水酸化マグネシウムとケイ酸塩などです。

生姜(しょうきょう)

生姜は優れた殺菌作用と健胃効果、血液循環の改善効果、発汗と解熱効果があります。漢方では芳香性健胃、矯味矯臭、食欲増進剤の他、解熱鎮痛薬、風邪薬、鎮吐薬として利用されています。

辛味成分のショウガオールやジンゲロールなどに解熱鎮痛作用、中枢神経系を介する胃運動抑制作用、腸蠕動運動充進作用などが有ります。そう他、炎症や痛みの原因物資プロスタグランジンの生合成阻害作用などが認められています。


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